ふしぎの国のバード 6巻 感想
- 作者: 佐々大河
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2019/07/13
- メディア: コミック
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勝手に#夏休み読書感想文シリーズ その1です。(その4まであるかも。)
過去の日本はもはや知らない異国
この漫画は、実在したイギリス人探検家のイザベラ・バードが明治11年に日本を訪れ、
これまた実在した通訳の伊藤鶴吉と共に日本を旅行する物語です。
140年前という、そんなに遠くない時代のはずなのに、
今の日本とはかけ離れた常識・習慣に溢れた日本は、もはや異国のようです。
人前で全裸を晒すことに抵抗のない老若男女。
子供たちがこの上なく大切にされる社会。(ぜひカムバックさせたい...)
などなど。
いろんな人の思い描く、厳しくも礼儀正しく賢く技術が高く、まじめな日本の伝統社会のイメージは結構崩れるかもしれません。
主人公のバード氏は異国人として、現代人に近い目線で次々とツッコミをいれていきます。
例えば初潮を迎えた女の子が成人の祝いを町中にお披露目することについて、
「なんのために?!」と衝撃と嫌悪感を隠しません。
私も「うわーありえないわ」とバードさんに共感します。
しかし通訳の伊藤の解説や、本人の誇らしげな様子
親や近所の人の態度を見て、バードさんは少女を祝福します。
こんな風に見知らぬ文化に出会い衝撃を受け、
その背景や当事者達の気持ちを知り、
共感できなかったとしても受け入れる、という出来事の連続で、
読者も一緒に見知らぬ日本の文化を少し理解することのできる漫画なのです。
前半ー火事
バード一行は秋田県の湯沢に到着し、火事に遭遇します。
しかし消化技術は未熟で、周りの建物を壊して延焼を防ぎながら鎮火を待つだけ。
現在でも地図の消防署のマークはYの字のようなマークですが、
それはこの周りの建物を破壊するための道具をモチーフにしています。
衝撃的だったのは火事見物も野次馬が集まること。
いや花火じゃないんだから...笑
さらに衝撃的だったのは消火後。
というか未だ完全に鎮火していないのに、大工さんたちが家の再建を始めます。
早ければ数時間で通りが元通りになるのだとか。えっマジで。
なので家が焼けても誰も悲壮な顔をしている人はいません。
バードさんはそこに日本文化の深淵を見出します。
話は脱線しますが、ローマなどでは築300年以上にもなる古い家の方が希少価値が高く、価格も高いのだとか。
中古になれば一気に価格の下がる日本とは大違い。
ヨーロッパでは地震が少なく、石造りの建物であれば数百年先まで残ることも可能です。
一方の日本は地震もあれば台風も水害も多くて、100年前の建物だって珍しい。
ならばいっそ壊れやすいけども建て直しやすい建物を、というのが日本家屋なのかもしれません。
現在では家が壊れると立て直すの大変ですけどね...。主に経済的に。
中盤ー和紙つくり
湯沢を出発したバードさんは十文字という集落で、和紙作りを見学します。
和紙がいかに耐久性の高い優れた紙であるかは本編を読んでいただくとして、
個人的には紙漉き職人の女性キャラがツボでした。
眉毛薄くてヤンキー顔なのに、結構親切で、おばあちゃんにも優しい。
絶対いい子。
後半ー葬儀
六郷という集落?の宿でたまたまその家の主人の葬儀に立ち会うことになります。
亡くなったご主人の奥様がまた竹下夢二の美人画のような憂いを帯びた美女でして...
バードさんに葬儀についてのもろもろを解説してくれます。
現在と大きく違うのは火葬しないということ。
頭を剃り、死装束を着せて桶に入れて土葬します。
そういえば昔ばなしの幽霊は桶から出てきたりしますもんね。
数多くの葬儀のしきたりをこなしながも、身分違いの恋愛結婚でのせいで親族からヒソヒソされている奥様。
こういう風景は現代でもありそうですね...
旦那様が存命の間は家長である旦那様がそうした親族の圧力から守ってくれていたのでしょうが、子供もいないまま亡くなってしまって、この先奥様はどうなるんでしょうか...。
家督は旦那様の弟が継ぐのでしょうが、そしたら奥様はどういう立場になるのでしょう?
最後は前向きな雰囲気で締め括られていましたが、あんまり明るい未来は想像できませんね...
どうでもいいけど伊藤は秋田弁もスラスラ聞き取れているのかしら?笑