番狂わせが面白い☆

予想外の事が起こる日々を楽しんでおります。ゆとり世代共働き1児(0歳)の母です。主に育児の記録、たまに趣味の宝塚感想など。

フライングサパ ざっくり感想 ウエクミの「人類補完計画」のその先

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映画館のライビュで観ましたが、まずは本当に本当に上演されて良かったです...!
いやもう本当に、当日まで「幕上がってくださいお願いしますマジでもうry」と神頼み状態でした。

ネタばれ禁止、「謎が解けていく過程を楽しんで欲しい作品」とのことだったので本当に今日まで初日映像もNOW ON STAGEも感想ブログも読まずに堪えてきました。
ひとこと感想、めちゃめちゃ面白かったです。
謎が少しずつ紐解かれていく過程は手塚治虫のSF漫画を読むようなワクワクドキドキ感がありました。
そして2幕クライマックスにかけて広げられる作品主題は重く、それに向き合う出演者の熱量は凄まじく、何かに当てられたようにボロボロと泣いてしまいました。
宝塚の王道的な男役のカッコよさや、ときめき満載のラブロマンス要素はないですがとても心ゆさぶられる作品でした。

※以降ネタバレ要素含みます

ヴコヴィッチの「ミレナに住民全員の意識をつなぐ計画」ってこれ新世紀エヴァンゲリオンの「人類補完計画」じゃない...?と思ったのは私だけではないはず。
人類補完計画を」非常にざっくり言うと、人間争いばっかりしているから全人類を一つの生命体に統合してお互い足りない所を補完し合いましょう、という計画です。計画を立てた碇指令は、息子のシンジを贄として計画を実行。シンジは精神世界の中で他人の記憶を共有したり、他者と自分を見つめ直した結果、「人間関係上手くいかないことがあっても今までのままの方が良い。自分と他人が1つにされているのは嫌だ。」的な事を言って補完計画を破綻させます。
うーん似ている。
似ているのですが、この作品はさらに一歩踏み込んで「本当にそれが良いのか?」という問いを突き付けてきます。

なんというか、「科学が暴走すると人間らしさを失う。それは良くないので昔ながらの人間らしさを見直そう。」といった物語で完結するSF作品は数多あります。それは産業革命以降急速に発展した科学と、それに依存する社会への警鐘として、ある種のパターン化された物語として確立しています。最近は人間がロボットやAIに人類が支配されるパターンもありますね。
この作品は科学というよりは思想の暴走を描いていると受け取っていますが、じゃあ暴走を止めて昔に戻った方が良いの?本当に?と一歩踏み込んだ問いをオバクに、そして観客に突き付けているように感じました。

そこからの目をそむけたくなるような場面、耳をふさぎたくなるようなオバクの叫びは観ていてなかなか辛い。
あんな悲劇を永久に二度と起さないための仕組みづくりが、ポルンカの社会であり、進化系がミレナへの意識統合なのでしょう。
宗教、文化の違いを無くし、犯罪を未然に防ぐことのできる平和な社会。
理屈は通っていますが、強烈な違和感がつきまとう社会。(冒頭の全員規則的に同じステップを踏むダンスや、無機質なスポーク巣パーソン101の説明、アンカーウーマン777のアナウンスなど、ポルンカに順応している住民の機械のような演技、演出が違和感の源泉)
でもヴコヴィッチに迷いは無い。
オバクに「俺が撃たなかったら人間を許すか?」と問われ「お前が撃たないなら私が撃つまで」と即答しました。(台詞違ったらすみません)
その時のヴコヴィッチの表情が何とも言えなくてとても印象に残っています。人間への憎しみだけでなく、諦め、拒絶が混じった彫像のような顔。オバクの感情的な表情と対照的(あの真風さんの表情もすごかった)です。

そしてこの作品の中での答えは、「宗教や文化の違いは認める」「共通の目的を持っていれば、それに向けて団結しやすくなるのでは?」という仮説の提示で終わりました。
上田先生の壮大な思考実験を見せられたような感じです。

うーんでもどうでしょう?
今ほぼ全人類共通の目的として「コロナ撲滅」「withコロナ時代の新しい生活様式を作る」などがありますけど、
めちゃめちゃモメてますよね?
同じ文化背景を持つ日本人同士でも色んなところで問題噴出しています。
なので作品の答え(仮説)に対してイイね!とは言えないのですが、、、
こうして考えさせられる点でも良い作品でした。

キャスト別感想は別途書きたいと思いますが、忘れぬ内にメモ書きを

オバク(真風さん) クライマックスの熱演本当に凄まじかったです。それと皆をまとめ上げ先頭に立つリーダーキャラの自然さ良い。
ミレナ(まどかちゃん) 今までに無い役柄めっちゃ良い!退廃的でスレているけれどもそれも何かイイ。役柄の幅が広がっている。
ノア(芹香さん) すべてを受け入れてくれそうな包容力!金色の時も優し気な役だったけれどもその時より断然魅力的になっている。
イエレナ(夢白ちゃん) こちらも宝塚娘役らしからぬ役だけどめっちゃ良い!死にに行くかと思ったけど死ななくて良かった。もう一回見ると印象変わりそう。
テウダ(松風さん) 母性。癒しの塊。え、女役初めて?嘘でしょ?
スポークスパーソン101(紫藤さん) スラっとしていて無機質な感じで美。宙組へようこそ!
タオカ(留依さん) 冒頭で世界観を説明するような役割も果たされていたと思いますがお見事。
ペレルマン(瑠風さん) スーツ姿スタイル良っ!
ズーピン(優希さん) ぴょんぴょん跳ねているのが印象的。途中から怪しい動きをしだす。


東京公演も無事に上演されますように!


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